Columnコラム

進化を続けるクレンジング

進化を続けるクレンジング

今年最後の美容コラムでは、ご自宅に必ず1品はある「クレンジング」をテーマにお話ししたいと思います。
最近は様々なクレンジングが販売されていますよね。オイル系・ジェル系・クリーム系・バーム系または拭き取りシートなどもありますが皆様はどのタイプのクレンジングをお使いでしょうか?なぜそのクレンジングを選ばれたのでしょうか?ご愛用期間はどれくらいになりますか?
選択理由も愛用期間も様々だと思いますが、このクレンジングが時代とともに進化を続けていることをご存じでしたか?昔を振り返りながらどの様に進化してきたのか、お話ししたいと思います。

そもそもクレンジングとはメイクの汚れを落とすものといった位置づけのアイテムですが、クレンジングにはメイク用品の進化に沿って進化してきた背景があります。
まずはファンデーションの歴史と共に振り返ってみましょう。

昭和初期の戦前までは白粉が主流でクレンジングではなく石鹸で洗い流していましたが、戦後の昭和20年代には油性ファンデーションやスティックタイプのファンデーションが登場しました。高度経済成長期には女性のメイクは濃くなり30年代に入ると固形ファンデーションが登場したことにより、携帯するには便利と女性の必需品となっていきます。
この頃からファンデーションの成分には欠かせない油性成分を落とすためにオイルクレンジングが登場し市場を牽引しました。油汚れは油で落とす!と記憶されている方も多いのではないでしょうか?その頃のオイルクレンジングはメイク汚れをオイルで溶かすだけで、水を加えることで乳化し洗い流すタイプの物でした。
そこから日焼けブームを追い風に、汗にも強いファンデーションへと進化し、社会進出する女性が増えるこの時代にファンデーションは飛躍的に進歩していきます。

平成に入ると耐久性の高いメイク用品が普及し、オイルクレンジングは低刺激でありながら乳化が早いものへと進化し肌質やライフスタイルに合わせた多種多様な形態のクレンジングが誕生し始め選択肢の幅は広がりました。
現在ではメイクの汚れを落とすだけではなくスキンケア効果の付加が当たり前となっているのが特徴です。このようにクレンジングは常に消費者のメイク習慣やメイク用品に応えるために技術革新してきた事が分かります。

昔お使いだったクレンジングを思い出された方もいるのではないでしょうか?このクレンジング開発の進歩の裏には乳化技術の向上があります。

「乳化」とは油と水などの「本来は混ざらないもの」が一時的に混ざり合う現象の事をいいますが、乳化状態を安定的に保つには「活性剤」が必要となります。この活性剤こそがクレンジングを進化させてきたのです。昭和30年代には石鹸から合成界面活性剤へと主役は移り急速に普及しましたが、この頃の界面活性剤は洗浄力重視だったため皮脂を強く落とすため肌荒れも多く問題にもなりました。そこで昭和50年~60年には低刺激性の物へと進化し、植物由来など肌荒れ防止の製品が次々と開発されました。生活調査のアンケートでも食器洗剤にも使われる界面活性剤の進歩により手荒れ経験数は昭和から平成と顕著に減少しているデータがあります。この事からも分かるように活性剤の進歩によりクレンジングは戦後80年の間に目覚ましい進歩を遂げ、今私たちの手元に存在しているのです。

では、多種あるクレンジングの中からどのようなタイプの物を選べば良いのでしょうか?前回の美容コラムを思い出して下さい。肌が乾燥する原因の1つに「洗浄方法」がありました。
洗顔の基本は「やさしく!短く!すぐ保湿!」でしたよね。この基本的な考えからすると、強く擦らないでもしっかりメイク汚れが落ち低刺激のものを選ぶ事、そして短時間で洗浄できる点ではW洗顔不要の物を選ぶと良いでしょう。肌への摩擦を軽減し毎日使ってもバリア機能が低下しない物を選ぶ事が大切です。

洗い流すクレンジングにお金はかけたくないとお考えの方も多くいらっしゃいますが、前にもお話ししたようにクレンジングは汚れを取り除くためだけのものではなくなり、現在はクレンジングにスキンケア効果や毛穴ケアが期待できるものもあります。今クレンジングは「メイク汚れを落とすもの」から「素肌を整えるもの」へと進化しているのです。これからは価格やテクスチャーだけで判断せず自分の肌質や肌悩み・ライフスタイルに合ったクレンジングを選ぶ時代なのです。

執筆者プロフィール

川戸 清弥
川戸 清弥顧問
ドイツ留学にて、皮膚理論や毛髪理論、エステティックの技術などを学び美容外科・皮膚科で美容カウンセラーを経験。現在は多くの企業やエステサロンと契約して化粧品プロデューサー、ビューティーアドバイザーとして海外でも活躍中。

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